訪日外国人の増加に伴い、商業施設では多言語案内や免税対応、キャッシュレス決済など、インバウンド向けの受け入れ環境整備が進んでいます。
しかし、施設として環境を整えていても、実際に外国人客と接する各テナントの対応品質に差があると、「この施設は分かりやすい」「安心して買い物できる」といった満足感につながりにくくなります。
たとえば、ある店舗では簡単な英語や翻訳ツールを使って丁寧に案内できている一方で、別の店舗では声かけを避けてしまう、免税や決済の説明が曖昧になる、困っている外国人客に気づけないといったケースもあります。
商業施設全体の接客品質を高めるには、個々のテナント任せにするのではなく、外国人客対応の実態を可視化し、施設全体で共通の改善基準を持つことが重要です。
本記事では、外国人客対応の接客品質にばらつきが出る理由と、覆面調査で確認すべきポイント、調査結果をテナント支援に活かす方法を紹介します。
商業施設では、施設全体としてインバウンド対応を強化していても、実際の接客対応は各テナントの運営体制に左右されやすくなります。
まずは、なぜ外国人客対応の品質に差が出やすいのかを整理しておきましょう。
商業施設では、複数のテナントが同じ施設ブランドのもとで営業しています。しかし、各テナントはそれぞれ異なる運営会社やブランド方針に基づいて接客を行っているため、外国人客への対応レベルに差が出やすくなります。
たとえば、外国人客の来店が多い店舗では、スタッフが翻訳ツールの使い方や免税案内に慣れている場合があります。一方で、外国人客の来店頻度が少ない店舗では、スタッフが対応に不安を感じ、声かけをためらってしまうこともあります。
また、同じテナントであっても、スタッフの経験値や勤務時間帯によって対応品質が変わるケースもあります。平日の日中はベテランスタッフが対応できていても、夕方や休日の混雑時には、外国人客への案内が十分に行き届かないことも考えられます。
施設全体としては「外国人客にやさしい商業施設」を目指していても、テナントごとの対応に差があると、外国人客が受け取る印象は一定になりません。結果として、一部店舗での不安や不便が、施設全体の評価に影響する可能性があります。
外国人客対応というと、まず英語力や多言語対応を思い浮かべる方も多いでしょう。
もちろん、外国語で案内できることは大きな強みです。しかし、外国人客が求めているのは、必ずしも流暢な英会話だけではありません。
重要なのは、困っている様子に気づくこと、分からないまま放置しないこと、翻訳ツールや館内マップを使ってでも何とか案内しようとする姿勢です。
たとえば、英語が得意でなくても、笑顔で声をかける、商品を指し示しながら説明する、翻訳アプリを使う、インフォメーションにつなぐといった対応ができれば、外国人客は安心して買い物を続けやすくなります。
反対に、多言語POPや英語表記が整っていても、スタッフが外国人客への対応を避けてしまえば、安心感にはつながりません。接客品質を見る際は、「英語が話せるか」だけでなく、外国人客が不安なく買い物できるようにサポートできているかを確認する必要があります。
テナントごとの外国人客対応は、施設運営側が日常的に細かく把握しにくい領域です。
施設側が館内サインや免税カウンター、共通案内などを整えていても、それが各テナントの接客現場でどのように活用されているかまでは見えにくいものです。
また、外国人客は不満を感じても、その場でスタッフや施設に伝えないまま離脱してしまうことがあります。言語の壁があるため、クレームとして表面化しにくく、口コミやレビューに投稿されて初めて課題に気づくケースもあります。
通常のアンケートでは、「どのテナントで、どのような対応があり、どこで不安を感じたのか」まで詳しく把握しにくい場合があります。そのため、実際の営業中に近い形で接客の様子を確認できる覆面調査が、現場の実態把握に役立ちます。
外国人客対応の接客品質を揃えるには、単に「外国語対応ができるか」だけを見るのではなく、来店から購買、施設サービスへの案内まで、実際の接客場面に沿って確認することが大切です。
ここでは、覆面調査で確認したい主なポイントを紹介します。
外国人客は、店頭や館内で迷っていても、すぐにスタッフへ声をかけられるとは限りません。
商品棚の前で長く立ち止まっている、案内表示を何度も見ている、スマートフォンで翻訳や地図を確認している、スタッフに声をかけようとしてためらっているなど、困っているサインを出している場合があります。
覆面調査では、スタッフがこうしたサインに気づけるかを確認します。
確認項目としては、以下のような内容が挙げられます。
外国人客にとって、スタッフからの一言は大きな安心材料になります。反対に、明らかに困っているのに誰からも声をかけられない状態が続くと、購買意欲の低下や早期離脱につながる可能性があります。
外国人客は、日本人客とは異なる視点で商品に魅力を感じることがあります。
たとえば、日本製であること、地域限定であること、ギフトとして持ち帰りやすいこと、写真映えすること、使い方が分かりやすいことなどが、購入の後押しになる場合があります。
しかし、商品の魅力が店頭で十分に伝わっていなければ、外国人客は「気になるけれど、よく分からない」と感じ、購入を見送ってしまうかもしれません。
覆面調査では、スタッフが人気商品やおすすめ商品を案内できるか、商品の使い方を簡単に説明できるか、サイズ・素材・原産国・賞味期限などを分かりやすく伝えられるかを確認します。
また、POPや写真、翻訳ツール、サンプルなどを活用して説明できているかも重要です。言葉だけで説明しようとするのではなく、外国人客が理解しやすい方法を組み合わせられているかを見ることで、購買につながる接客ができているかを判断しやすくなります。
購買直前の不安を解消できるかどうかは、外国人客の購入判断に影響します。
特に、免税手続き、利用できる決済方法、返品・交換ルールなどは、テナントごとに説明品質の差が出やすい項目です。
たとえば、外国人客が「この商品は免税対象か」「どこで手続きするのか」「どの決済方法が使えるのか」を尋ねた際に、スタッフが正しく案内できなければ、購入をためらう原因になります。
覆面調査では、以下のような項目を確認します。
商業施設の場合、免税カウンターが施設共通で設置されているケースもあります。その場合は、テナントから免税カウンターまでの案内がスムーズかどうかも、接客品質の一部として確認する必要があります。
翻訳アプリや多言語POPを導入していても、スタッフが使い慣れていなければ、実際の接客では十分に活用されません。
外国人客への対応に慣れていないスタッフほど、「うまく話せないから声をかけない」「翻訳アプリを使うのに時間がかかる」といった状態になりやすいものです。
覆面調査では、ツールがあるかどうかだけでなく、スタッフが必要な場面で自然に使えているかを確認します。
翻訳ツールを使うこと自体が目的ではありません。大切なのは、ツールを活用して外国人客が安心して次の行動に移れる状態をつくることです。
商業施設では、各テナントだけでなく、施設全体で提供しているサービスも外国人客の満足度に関わります。
たとえば、インフォメーション、免税カウンター、館内Wi-Fi、コインロッカー、トイレ、休憩スペース、ベビールーム、観光案内、交通案内などです。
外国人客がテナントスタッフに施設内の場所やサービスについて質問した際、適切に案内できるかどうかは、施設全体の接客品質を左右します。
覆面調査では、以下のような項目を確認します。
自店舗で完結しない相談を受けた際に、「分かりません」で終わるのではなく、適切な窓口やスタッフにつなげられるかも重要です。テナントと施設共通サービスが連携できているほど、外国人客は安心して館内を回遊しやすくなります。
外国人客対応の品質を揃えるには、各テナントの状況を同じ目線で確認し、改善につながる形で整理する必要があります。
ここでは、覆面調査を設計する際の考え方を紹介します。
商業施設には、アパレル、雑貨、食品、飲食、サービスなど、さまざまな業種のテナントが入っています。
すべてのテナントをまったく同じ項目で評価すると、業種ごとの接客特性が反映されにくくなる場合があります。一方で、項目を個別にしすぎると、施設全体として比較しづらくなります。
そのため、覆面調査では、全テナントに共通する項目と、業種別に確認すべき項目を分けて設計することが重要です。
共通項目としては、以下のような内容が挙げられます。
一方、業種別項目としては、以下のような内容が考えられます。
共通項目で施設全体の接客品質を比較し、業種別項目で各テナントの実態に合った課題を把握することで、より実効性のある改善につなげやすくなります。
覆面調査の結果をテナント支援に活かすには、点数だけでは不十分です。
たとえば、「外国人対応:60点」と示されても、現場のスタッフは何をどう改善すればよいのか分かりにくいでしょう。改善につなげるには、どの場面で不安を感じたのか、どの説明が分かりにくかったのか、反対にどの対応が安心感につながったのかを具体的に記録する必要があります。
コメントでは、できていない点だけでなく、良かった対応も残すことが大切です。高評価の対応を共有すれば、他のテナントへの横展開にも活用できます。
また、改善点を伝える際は、スタッフ個人を責めるような表現ではなく、行動改善につながる形で整理することが重要です。
たとえば、「英語対応ができていない」と書くだけではなく、「外国人客が商品について質問した際、翻訳ツールを使わずに説明を断念していたため、翻訳アプリを使った確認フローを整えるとよい」といった形にすると、現場が次の行動を取りやすくなります。
覆面調査の結果は、個店ごとの評価だけでなく、テナント別・フロア別・業種別に傾向を整理することで、施設全体の改善テーマが見えやすくなります。
たとえば、あるフロアでは声かけの評価が高い一方で、別のフロアではインフォメーションへの誘導が弱いといった傾向が見えるかもしれません。
また、アパレル店舗ではサイズ案内に課題があり、飲食店舗ではアレルギーや食事制限への説明に課題があるなど、業種ごとの改善テーマが明確になる場合もあります。
時間帯による差も確認しておくとよいでしょう。混雑時やスタッフが少ない時間帯に対応品質が落ちる場合は、接客スキルだけでなく、オペレーション面の見直しが必要になることもあります。
このように、調査結果を多角的に整理することで、施設全体で優先的に取り組むべき課題と、個別テナントごとの改善課題を分けて把握できます。
外国人客といっても、来館目的や利用シーンによって必要な対応は異なります。
そのため、覆面調査では、複数のシナリオを用意して接客品質を確認することが有効です。
たとえば、以下のようなシナリオが考えられます。
シナリオを複数設定することで、単なる挨拶や表面的な接客だけでなく、実際に外国人客が困りやすい場面での対応力を確認できます。
また、調査員の属性も目的に応じて検討するとよいでしょう。想定する来館者層に近い調査員を設定することで、より実態に近い気づきが得られやすくなります。
外国人客対応の接客品質を揃えるには、調査を実施して結果を確認するだけでは不十分です。
重要なのは、調査で見えた課題をテナントに共有し、現場で実行できる改善行動に落とし込むことです。
覆面調査の結果を点数や順位だけで共有すると、テナント側が一方的に評価されたと感じてしまうことがあります。
特に商業施設では、テナントとの関係性を保ちながら改善を進める必要があるため、調査結果の伝え方が重要です。
接客品質を揃えるためには、調査を「評価」ではなく「改善支援」として位置づけることが大切です。
たとえば、点数の優劣を強調するのではなく、「外国人客が安心して買い物できる施設にするために、どの接点を改善すべきか」を共有します。良い対応事例もあわせて伝えることで、テナント側も前向きに改善へ取り組みやすくなります。
また、調査結果をもとに一方的に指摘するのではなく、テナント側の事情や現場の課題も聞きながら改善策を考えることが大切です。調査結果をきっかけに、施設側とテナントが同じ目的を共有できれば、接客品質の底上げにつながりやすくなります。
テナントごとの対応差を抑えるには、施設共通の外国人対応ガイドラインを整えることも有効です。
ガイドラインには、外国人客への基本的な声かけ、翻訳ツールの使い方、免税カウンターへの案内方法、利用できる決済方法の説明、館内施設への誘導、困ったときの引き継ぎ先、トラブル時の一次対応などを盛り込みます。
ここで重要なのは、細かすぎるマニュアルを作ることではありません。どのテナントでも最低限守るべき対応基準を分かりやすく整理することです。
たとえば、「外国語が話せない場合は、翻訳アプリを使う」「免税の質問を受けたら、対象条件を確認したうえでカウンターへ案内する」「場所を聞かれたら、館内マップを使って説明する」といった基本行動を共通化するだけでも、対応品質のばらつきは抑えやすくなります。
覆面調査で見えた課題をもとにガイドラインを作成すれば、現場実態に合った内容になりやすく、テナントにも共有しやすくなります。
接客品質を揃える際は、課題のある店舗を改善するだけでなく、高評価だった店舗の対応を横展開することも重要です。
たとえば、外国人客への声かけが自然だった店舗、翻訳ツールをスムーズに使えていた店舗、免税案内が分かりやすかった店舗、商品の魅力をうまく伝えられていた店舗などがあれば、その対応を施設内で共有します。
現場にとって、抽象的な指導よりも、同じ施設内のテナントで実際にできている対応事例の方が参考にしやすい場合があります。
「この声かけなら自店舗でもできそう」「この案内方法ならスタッフに共有しやすい」と感じられれば、改善行動にもつながりやすくなります。
また、高評価店舗の取り組みを共有することで、テナント側のモチベーション向上にもつながります。覆面調査を単なる減点評価ではなく、良い取り組みを発見し、施設全体に広げる機会として活用することが大切です。
一度の覆面調査で課題を把握しても、その後に改善が定着したかまでは分かりません。
外国人客対応の接客品質を施設全体で揃えるには、初回調査で現状を把握し、フィードバックや研修を行い、再調査で改善状況を確認する流れが必要です。
再調査では、前回と同じ項目を確認することで、どのテナントで改善が進んだか、どの項目がまだ弱いかを比較できます。
たとえば、初回調査では翻訳ツールの活用が不十分だったものの、研修後には使用率が上がった、免税カウンターへの案内がスムーズになった、外国人客への声かけが増えたといった変化を可視化できます。
このように、覆面調査を単発で終わらせるのではなく、定期的なPDCAに組み込むことで、外国人客対応の品質を継続的に高めやすくなります。
外国人客対応の接客品質をテナントごとに確認する場合、調査会社には商業施設ならではの運営課題を理解していることが求められます。
ここでは、覆面調査会社を選ぶ際に確認したいポイントを紹介します。
商業施設の覆面調査では、単独店舗の接客評価とは異なり、複数テナントを束ねる施設運営の視点が必要です。
そのため、調査会社を選ぶ際は、商業施設での調査実績があるか、テナント別評価に対応できるか、フロア別・業種別の傾向整理ができるかを確認しましょう。
また、施設共通サービスとの接続まで見られるかも重要です。外国人客対応では、テナント内の接客だけでなく、インフォメーション、免税カウンター、館内マップ、Wi-Fi、ロッカー、休憩スペースなどへの案内も含めて評価する必要があります。
商業施設の構造やテナント運営を理解している調査会社であれば、調査結果を施設全体の改善につなげやすくなります。
外国人客対応の覆面調査では、調査員の属性やシナリオ設計によって見える課題が変わります。
たとえば、想定する来館者が観光目的なのか、買い物目的なのか、家族連れなのか、一人旅なのかによって、必要な案内や接客は異なります。
そのため、調査会社には、外国人客に近い視点で調査できるか、国籍・言語・属性条件について相談できるか、来館目的別のシナリオを設計できるかを確認しておくとよいでしょう。
また、一般消費者に近い視点で評価するのか、接客や店舗運営に詳しい専門的な視点で評価するのかによって、調査結果の活用方法も変わります。
「外国人客としてのリアルな感想を知りたい」のか、「接客改善や研修につなげるために専門的な指摘がほしい」のかを整理したうえで、調査会社に相談することが大切です。
テナントごとの接客品質を揃えるには、調査して終わりではなく、現場の改善行動までつなげることが重要です。
そのため、調査会社を選ぶ際は、テナント向けのフィードバックに対応できるか、研修や改善アドバイスまで相談できるか、レポートを現場共有しやすい形でまとめられるかを確認しましょう。
特に、外国人客対応では、スタッフが「英語が話せないから対応できない」と感じてしまうことがあります。調査後の研修やフィードバックでは、完璧な語学力ではなく、安心感を与える初動対応や翻訳ツールの使い方、館内サービスへのつなぎ方など、現場で実践しやすい内容に落とし込むことが大切です。
また、再調査や定期調査に対応できるかも確認しておくと、改善の定着度を継続的に把握しやすくなります。
外国人客対応の接客品質は、施設全体で多言語案内や免税対応を整えているだけでは揃いません。
実際に外国人客と接する各テナントの対応に差があると、施設全体の印象や購買体験に影響する可能性があります。
覆面調査を活用すれば、テナントごとの声かけ、商品説明、免税・決済案内、翻訳ツールの活用、施設共通サービスへの誘導などを、通常営業に近い形で確認できます。
重要なのは、調査結果を点数として終わらせず、テナントへのフィードバックや研修、共通ガイドラインの整備、再調査による定着確認までつなげることです。
外国人客対応の品質を施設全体で底上げしたい場合は、商業施設の運営課題を理解し、調査後の改善支援まで相談できる覆面調査会社を選ぶとよいでしょう。
「テナントごとに外国人客対応の品質差がある」「調査結果を研修や改善活動に活かしたい」と感じている場合は、覆面調査会社の支援内容を比較することが大切です。
調査設計、レポート内容、フィードバック体制、研修対応の有無を確認し、自施設の課題に合った会社を選びましょう。
本サイトでは、商業施設の課題別に覆面調査会社を紹介しています。調査結果をフィードバックや研修までつなげたい場合は、対応範囲や支援内容を比較してみてください。
覆面調査の効果を最大限発揮するには、課題に即した覆面調査会社を選ぶ必要があります。
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